「ぼっち・ざ・ろっく」である。
もう何度観たことか、1話から最終回まで既に5-6回は観ているはずだ。このアニメのクライマックスは何度か訪れるのだが、やはり11-12話(最終回)に掛けてのライブシーンではなかろうか。
そして、その中の挿入歌「忘れてやらない」こそ、この五十を過ぎたおっさんの心に刺さりまくる、そんな曲だったのだ。とりあえず、どんな曲か公式から曲と歌詞を引用するので聞いてみて欲しい。
ぜんぶ天気のせいでいいよ
この気まずさも倦怠感も
太陽は隠れながら知らんぷりガタゴト揺れる満員電車
すれ違うのは準急列車
輪郭のない雲の表情を探してみる「作者の気持ちを答えなさい」
いったいなにが 正解なんだい?
予定調和のシナリオ踏み抜いて青い春なんてもんは
僕には似合わないんだ
それでも知ってるから 一度しかない瞬間は
儚さを孕んでる
絶対忘れてやらないよ
いつか死ぬまで何回だって
こんなこともあったって 笑ってやんのさ狭い教室 真空状態
少年たちは青春全開
キリトリ線で区切れた僕の世界嫌いな僕の劣等感と
他人と違う優越感と
せめぎあう絶妙な感情
いったい なにやってんだ「わかるわかる、同じ気持ちさ」
ホントにそう思っていますか?
たじろぐ僕の気も知らないで誰かが始める今日は
僕には終わりの今日さ
繰り返す足踏みに 未来からの呼び声が
響いてる「進めよ」と
運命や奇跡なんてものは
きっと僕にはもったいないや
なんとなくの一歩を 踏み出すだけさオトナほどクサってもいなくて
コドモほど天才じゃないが
僕は今 人生の中間だ風においてかれそうで
必死に喰らいついてる
いつもの鐘の音も 窓際に積んだ埃も
教室の匂いだって
絶対忘れてやらないよ
いつか死ぬまで何回だって
こんなこともあったって 笑ってやんのさ
「忘れてやらない」作詞:ZAQより引用
自分が高校に在学中だった頃は、いわゆる「陽キャ」の部類に属していたのだろう。お調子者でクラスでもまあまあ友達が居て、学級委員長や文化祭実行委員なども務めたっけ。ただ、そんな中でも当時から自転車旅に没頭し、夏休みにでもなればバイトで貯めた有り金を全て握りしめて全国各地へと出掛けていた自分は、どこか「普通じゃない」「お前らにこの旅の素晴らしさが分かってたまるか」など、他人とは違う優越感を抱いていたもんだ。
でも、さもすれば「社会から少し外れた存在なのでは?」「こんなことをしていて大丈夫なんだろうか?」という劣等感・・・危機感?みたいなものを孕んでいたことも事実だ。
そのような「せめぎあう絶妙な感情」の中で予定調和を踏み抜き、「何が青春だよ!」と悪態を付きながらキリトリ線で区切れた自分の世界=自転車旅へと出かけた行ったのだ。
自分では分かっていたこと、それは、この瞬間は一度しかないこと。
そして、それは儚いものであること。
この頃から、俗に言う大人たちと混じって自転車を楽しんでいた僕は、そのことを嫌と言うほど聞かされていた。
それが旅への原動力となっていたことは間違いない。
旅を終え、日常に戻れば普通の学園生活が待っていた。
自分の儚い、夢の様な世界から現実へと引き戻される瞬間は、何とも残酷なものだ。
世間という風においてかれそうになっても必死で喰らい付き、繰り返される世間での生活と旅という夢との足踏みの狭間で、次の未来からの「進めよ」と言う呼び声が響くまで、僕はじっとその時を待って行動に移す・・・。
こんなこと、絶対忘れられる訳ないじゃん。
色褪せることなんて絶対ない!
いつか死ぬまで何回だって思い出すし、それは間違いなく自分が進んできた「何となくの一歩」の積み重ねなのだ。こんなこともあったって笑い飛ばせる、そんな今がこの曲とオーバーラップして心に響くのだ。
だから何?
でも、僕はそういう旅ができてよかったと心から思っている。ちなみに、僕が卒業した高校には卒業論文があって、難しいことが書けない自分は「山行記」と記した、俗に言う紀行文を書いたのだ。
担当の先生は今でも名前が思い出せる・・・岸田先生。
山好きで、当時は30代後半?くらいだったか。女性らしい柔らかな物腰でありながら、山で鍛えた厳しさを併せ持つお気に入りの先生だった。
そして肝心の論文は400字詰め原稿用紙で313枚という超大作になった。
まあ、多く書いた努力を認めていただき「優秀賞」をもらったが、選考委員の先生から「これは一生ものの宝物になるから大切に保管して、絶対になくさないで欲しい」と言われ、更に「読んだものの中で一番面白かった。紀行文なので最優秀賞はあげられないけど、僕の中では一番だった」と付け加えてくれたことは、上手い下手は別として、僕がこうして物を書くことが苦にならない、最も大切な礎を与えてくれたのではないかと思っている。
自転車の旅は僕に多くのものを授けてくれた。
でも、まだ道半ば。
まだまだ旅をして「忘れてやらない」を自分の心の中に、しっかりと刻んでいきたいのだ。



こっそり。
自分はきくりさんが登場する第6話と、このアニメのタイトルに直結する第8話がお気に入り。
あ、もちろん11-12話は当然です。